大興寺
県内最大の鏝絵は大迫力
曹洞宗仏日山大興寺は天保2年(1645年)に、周防国(今の山口県)禅昌寺の住職だった玉峯玄臺禅師によって開山されました。禅昌寺は、周防国を「西の京」とうたわれるまでに発展させた地方豪族の大内氏が開基した寺で、その流れをくむ大興寺も本堂の瓦紋に大内氏の家紋である「大内菱」を使用しています。
山のふもとに建つ大興寺で、まず目に入るのが県内でも珍しい支那様式の山門です。安永9年(1780年)に再建されたもので、表裏に鳳凰と龍を描いた県内随一の大きさを誇る見事な鏝絵(こてえ)があります。
鏝絵は、壁を塗る左官職人がこてで漆喰に立体的な絵を描いたもの。手早く仕上げなければ漆喰が乾いてしまいますので、いかにスゴ技であるかがうかがえます。また、龍の鏝絵の上に掛けられている扁額は、「幕末の三舟」のひとり、江戸城無血開城への道を開いた山岡鉄舟の書です。
大内家にゆかりのある大興寺ですので、江戸期の本堂や山門の再建工事にはもちろん長州大工の手が入っています。山門の遺構もすばらしいですが、これも珍しい2層式の鐘楼や本堂内の欄間彫刻など見どころがたくさんあります。
本堂の左手には、建立年代は不明ですが、室町時代の作といわれる一本木彫りの毘沙門天を祀る毘沙門堂があり、戦時中は戦の神である毘沙門天のご利益で勝利をおさめるようにと、多くの人が参拝しました。
ゴージャスな大洲藩のお姫様の籠(かご)
また、大洲藩の姫が輿入れの時に使用したとされる籠(かご)があり、希望すれば見学ができます。本金蒔絵漆塗りの籠は、美しい見た目の上に、実は機能的。屋根部分は乗り降りしやすいよう上部にパカっと開きます。
三方についた小窓は、スライドすると格子窓に変化。籠内の格天井には様々な花の絵が描かれており、小窓もスライドを閉じると美しい花の絵が短冊状に現れます。
全体に金の蒔絵が施され、彫金金具も凝った装飾で、見るからにゴージャスな乗り物です。
見事なツツジの裏庭を鑑賞し、座禅や写経体験はいかが
現在の20代目ご住職さんは気さくな方で、寺にまつわる色々な話を聞かせてくれます。
例えば、本堂の天井にはご本尊様の頭上に当たる部分に龍の絵が描かれていたり、お経を読むときに鳴らす木魚や時刻を知らせるためにたたく梆(ほう)も魚の形をしているなど、寺には龍や魚を模した法具が多いとのこと。
これは古来、龍や魚はまぶたがなく眠らないと思われていて「魚のように昼夜を問わず寝る間を惜しんで励みなさい」という修行僧への戒めのためだと教えてくれました。
他にも、本堂に掛けられた絵馬は、伊予に京都四条派の画法を伝えたことで有名な松山三津の絵師・森田樵眠によるもので、弘化元年(1844年)の作です。
希望があれば、座禅体験や写経指導なども行ってくれるそうです。
本堂の裏庭には、山肌に沿ってたくさんのツツジの木が植栽されていて、4月下旬から5月上旬にかけて様々な種類のツツジが咲き誇る様を楽しめます。
住所 | 伊予市中山町中山丑491 |
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お問い合わせ | 089-967-0049 |
営業時間 | 参拝自由 |
その他 | ※大洲藩姫使用の乗物籠は、本殿にあるため見学には申し込みが必要です |